トランスジェニック人間 1

11月4日

普段通りの昼下がり、太陽は雲の隙間から覗き心地よい光を地上へもたらしている。A氏は仕事をひと段落させオフィスの外にある緑地スペースへと向かった。彼は都市デザインの学校を終了し、建築デザインの会社で働く。特に闘争心や野望をもっているわけではないが、かといって怠け者であったり、夢がないわけではない。全ての住宅に平等に日光が届くようなデザインの実現と彼なりの夢を持って毎日人間社会の一員として過ごしている。A氏の朝は早く、日の出前には起床し太陽が地平線から顔を出す頃にはオフィスで仕事を始めてしまう。ちょうど正午頃日光が一段強く照りつけるようになると、オフィスの緑地スペースに設置された日向ぼっこ用の椅子へ移動する。

ああ今日の太陽は雲に少し隠れてるせいか日差しがあまり強くないな。でもこうして木の隙間を飛び回る小鳥たちを見ながら座っているだけでも心が落ち着く。

A氏は背中に折りたたまれていた、それはまた大きな一枚の葉のような、それでいて鳥の羽のように何層にも複雑に繊細な毛のようなものが重なり合った器官を取り出しながら言った。